灸(きゅう)は、経穴(つぼ)と呼ばれる特定の部位に対して温熱刺激を与えることによって痛みなどに対応する伝統的施術です。もぐさを皮膚に乗せて火を点ける方法が標準とされていますが、種々の灸法が存在しています。
灸の起源は約三千年前の古代中国の寒い高原地帯の遊牧民の間で発達し、普及されていたと記されています。現代まで、民間療法的側面を強くしながら伝わっていきました。江戸時代には庶民生活のなかに溶け込み、町家での灸があたりまえでした。
「蛍火は川のせなかのやいとかな(野々口立圃)」などの俳句にも、背中にお灸をしていたことがうかがわれます。
灸治療にもちいる“もぐさ”は、ヨモギの葉の裏にある毛茸(もうじょう)という部分を集めたものです。
現在、もぐさには血圧下降作用・抗菌作用などがあると化学的に判明しています。
古来から、「気を理え、血をいかし、経脈を温め止血する。寒湿をさり冷痛を止め胎児を休らげる作用があるといわれています。
漢方薬ではヨモギの葉を止血・鎮痛薬・吐血・下痢・帯下・腹痛などに用いています。昔の人は自宅でヨモギを摘んできて、家庭でモグサを作っていたそうです。