鍼(はり)は、主に中国医学の理論に基づいて専用の鍼(針)を用いて皮膚・筋肉などを刺激することにより、痛みなどに対応する伝統的施術です。
中国で出土した甲骨文字(BC1384-1112年ごろ)には人体の名称、疾病、治療法(薬、鍼、灸、按摩)などに関する文字が記されていて古くから鍼灸医学が存在していたことを示唆しています。
日本においては鍼、灸、湯液などの伝統中国医学概念は遣隋使や遣唐使などによってもたらされたといわれています。奈良時代の律令制において既に鍼師(官職名としては針博士・針師)が医師、按摩師などと共に存在していたことが分かります。
近年、西洋医学、東洋医学の概念を含めた総合医療が注目されており、鍼灸医学はその中核を担うものです。
現在(2008年)、大学における鍼灸学の学部・学科は、明治国際医療大学、関西医療大学、鈴鹿医療科学大学、帝京平成大学、筑波技術大学があり、2007年には森ノ宮医療大学が新設されました。また、大学院は1991年に明治国際医療大学に初めて設置され、1996年には博士号(鍼灸学)が授与されました。2007年には関西医療大学でも大学院教育がスタートしました。
それぞれの教育機関では鍼灸治療の科学化に向けて研究が進んでいます。
研究により以前は経験医学ととられていた鍼灸治療が、現在では多くのことが科学的に立証されつつあります。
小児はりとは、生後20日ぐらいから5歳くらいまでの小児を対象にした治療法です。6歳以降は成人と同じような治療法で対応が可能となります。
主に特殊な鍼を用いて、主に皮膚接触刺激を行います。
昔から虫はりは関西、特に大阪では非常に盛んにおこなわれている施術法です。
小児鍼には、大きく四つの種類があります。
1.接触鍼類 針尖を皮膚にあててわずかに接触するもの
2.摩擦鍼類 皮膚を摩擦するためのもの
3.切皮鍼類 切膚に対して強い刺激をあたえるもの
4.刺入鍼類 一般的 針およびその他の針
特に夜泣きや疳の虫、夜尿症などに効果があります。
他にも下痢や便秘などの胃腸症状にも効果が認められます。
この適応症に記載のない症状にも効果が認められるものがあります。詳しくは、お問い合わせください。
不眠症に対する鍼灸
不眠とは、つねに睡眠が不足することをいいます。
軽症のものでは寝つきが悪い、すぐに目が覚める、なかなか寝つけないなどを訴え
重症になると夜通し眠れないなどといった症状に発展することがあります。
東洋医学での不眠の分類
(1)飲食不摂生し胃腸不良による不眠
(2)全身疲労によって起こる不眠
(3)精神的ストレスで胃腸の働きが悪くなっておこる不眠
(4)精神的ストレスで脳が興奮して起こる不眠
鍼灸では次のことを目的に行います。同時に日常生活の改善も必要です。
1.胃腸を整える
2.全身の疲労を取る
3.脳の興奮を落ち着かせる
頭痛(片頭痛)に対する鍼灸
多くの人にみられる自覚症状です。脳自体に問題(例えば脳腫瘍)がある場合には鍼灸は効果がありません。東洋医学では、頭痛を大きく二つにわけます。
(1)生活の不注意で頭の血流が悪くなった頭痛
a)冷たい風(冷房)に長時間あたる。
b)直射日光に当たりすぎる。
c)寒い場所で長く過ごす
(2)頭に血液が流れにくくなり起こる頭痛(頭部以外に原因のあるもの)
a) ストレスによる血流障害
b) 飲食不摂生で胃腸に血液が集まりすぎたもの
c) 疲労により全身的に血流が悪いもの
施術法は、主に症状緩和を目的に行いますが、全身状態の改善も視野にいれ施術します。
坐骨神経痛に対する鍼灸
机の前で座っている時間が長い人に多く見られます。長期にわたるしびれや麻痺状態に移行するケースもあるので注意が必要です。
東洋医学での分類
(1)体(腰から下)を冷やしたり、湿っぽい住環境にすんでいたりして起こる痛み
(2)体力低下時に腰に無理をかけて起こる痛み
(1)は特にエアコンなどで悪化します。(2)の場合は体を前屈するのが難しくなります。
鍼灸は腰から下の血流を改善することを目的に行います。
脳卒中後遺症に対する鍼灸
脳卒中後の後遺症緩和に鍼灸治療が効果あることはあまり知られていません。脳卒中になる人には共通して身体の強い疲労が存在しているので、疲労をとるように鍼灸を行います。また手足に鍼をすることで、動きが改善されます。
顔面神経麻痺に対する鍼灸
顔面神経麻痺の患者さんにお話を聞くと
(1)長い時間顔を冷気に当てた
(2)身体を疲労させ過ぎるとある朝起きたら麻痺を起こしていた
ということを口々に話します。顔面神経麻痺には、ウイルス感染を起こしているものも存在しますので、一度病院にて検査を受けると良いと思われます。顔面部にも鍼をしますが、経験上顔面部に鍼灸治療を行わなくても症状の緩和を見たことがあります。
ノイローゼ 、対人恐怖症に対する鍼灸
非常に難しい症状ですが、鍼灸治療が効を奏することがあります。
ノイローゼ、対人恐怖症とも人間関係の乱れが原因と考えられますが、東洋医学では脳の血流が悪く正常な思考ができないために起こると考えます。
精神状態を訴えて来院される患者さんの多くは、肩こり症状など不定愁訴をかかえています。鍼灸ではこの不定愁訴部分の症状緩和を目的に施術を行います。
鍼灸でめまい(眩暈)症状の緩和
目がかすんで目の前が暗くなるのを「眩」といい、グルグルと物が回って見えたり揺れたりするのを「暈」といい、この二つをあわせて「眩暈」と称します。
軽症では発作は短く横になって目を閉じて休めば止まります。重症になると周囲が回り立っていられなくなり嘔吐し倒れることがあります。
東洋医学では、「めまい」は、頭の症状ではなく「胃腸の症状」と捉えています。
頭を中心に施術は行いません。むしろ胃腸症状の緩和を目的とした施術をすると、同時にめまい症状の緩和が期待できます。
慢性疲労に対する鍼灸
疲労とはいったい何でしょうか?
東洋医学では、疲労=血行不良と考えます。その為疲労を訴えて来院される患者さんには、全身が温まり血流を良くする「お血吸圧法」の施術を薦めています。また、日常の疲労がとれる養生法も指導させていただいています。
難聴・耳鳴りに対する鍼灸
耳鳴は耳の中で音がし、耳の聞こえが悪くなるものです。難聴は聴力の減退し、ひどい場合には聴覚が消失します。耳鳴は難聴の前兆であることが多くあります。東洋医学では耳そのものが悪くなっているとは考えません。
(1)強いストレス
(2)酒や味の濃いものの摂取過剰
(3)疲れすぎ
(4)過食、冷たい物の摂取
以上を原因として胃腸が悪くなり発症すると考えます。あくまで東洋医学的な捉え方です。
この症状は軽度な状態(音が小さい、少し聞こえ難い)ほど施術効果も良いので、早期の施術をお薦めします。
冷え性に対する鍼灸
冷え性は「下半身の冷え」と「上半身ののぼせ」を伴うものが多く見られます。自覚症状として、のぼせ・不眠・心悸・めまい・頭張感・目の乾き・足の冷えなどを訴えます。
鍼灸は下半身の冷え症状改善を優先します。結果として自然と上半身の“のぼせ”症状が改善します。特に骨盤内の血行不良を改善するようなお灸は症状の緩和に効果的です。
生理痛に対する鍼灸
東洋医学では月経期あるいは、前後の痛みを「痛経」「径行腹痛」とも表現します。ひどい場合は耐え切れない痛み、顔面蒼白、冷や汗、悪心嘔吐などの症状を伴います。
原因は、大きく三つに考えられます。
(1)月経期に雨に濡れたり水泳したり生冷の物を飲食したり身体を冷やしておこる痛み
(2)精神的不安定により起こる痛み
(3)SEXが過度になり起こる痛み
鍼灸では、背中のツボや手足のツボを使い症状の緩和を目指します。月経期には過度の精神状態や労働を避けて、生ものや冷たいものを過食しないように注意します。また、子宮前後屈・子宮頚菅狭搾・子宮内膜症などがあると生理痛がひどいことが多いようです。その場合は専門医と協力して施術を進めていく必要があります。
関節リウマチに対する鍼灸
鍼灸が最も効果的なものがリウマチです。関節リウマチの症状で鍼灸の効果が期待できるのは、関節の痛みに対してです。一般の鎮痛薬を用いるのとは異なり、鍼灸は内因性鎮痛物質の分泌を促進する働きがあることが研究により解明されています。つまり鍼をすると患者自身の脳より痛みを抑制する物質の分泌を促します。鎮痛作用としては麻酔薬にくらべて緩徐ですが、継続的に施術することで効果を期待できます。
五十肩に対する鍼灸
五十肩という病名は俗称であって正式には、肩関節周囲炎という病名です。主に肩の周りの筋肉などの加齢性退行変化に、寒冷などの肩を冷やすことが加わり発症します。
棘上筋腱、上腕二頭筋長頭腱などの炎症を伴うことが多くみられます。長期的にわたり痛みを訴えることが多いとされていますが、早期に診断をうけ早期に鍼灸治療を受けることで痛みの軽減が期待できます。
腰痛に対する鍼灸
腰痛は、現代医学では腰部の筋肉損傷、腰椎椎間板ヘルニア、せき髄疾患や内臓病変の際に見られるとしています。東洋医学における腰痛は筋肉の働きより腰部に関わる循環について重要視します。
(1)湿気の多い所に居住したり、汗をかいて風にあたったりして体を冷やすとおこる腰痛
(2)過度なSEXや長期臥症などで身体が弱かったりしておこる腰痛
(3)打撲などにより、腰部の血流が悪くなった腰痛
いずれも、鍼灸により効果が期待できますが、(3)の場合だけ注意が必要です。転倒後に腰をうちつけた場合に、血尿が出ることがあります。その際は、腎臓破裂の可能性がありますので必ず専門医を受診して下さい。
肩こりに対する鍼灸
肩こりは、首や首のつけねの部位、肩甲部の筋肉が重く疲労し、ひっぱられる感じがおこります。時には、痛みを伴い、首の動きも制限をうけることが多くなります。現代医学では、原因や分類ははっきりしません。
東洋医学では以下のように分類します。
(1)汗をかいて風をうけて体をひやして発症する肩こり
(2)ストレスにより、体が緊張しておこる肩こり
(3)目を酷使や、産後の消耗などで疲労したときにおこる肩こり
(4)呼吸器系の病気をもっていて、息が浅くなっておこる肩こり
(5)ゆううつな状況が長く続いておこる肩こり
吸玉療法やお血吸圧療法を組み合わせると鍼灸での効果を期待できます。正しい姿勢を注意したり、適当に運動したり、精神を安定させることや発汗後に風に当たらないように注意が必要です。
首の痛みに対する鍼灸
(頚腕症候群、頚椎捻挫後遺症、胸部出口症候群)
首の症状は、睡眠中に十分な疲労が解消されないことにより起こります。従って鍼灸では、全身的な症状の緩和を目的とします。
疳の虫に対する鍼灸
不機嫌や不眠、かん高い声を発する症状が主です。いわゆる青筋がコメカミ見られるので一見してすぐわかります。小児期の胃腸の機能は未発達なので食事の内容や食事の時間を節度あるものにしないと精神と身体のバランスが崩れて、神経的にイライラし始めます。
特に油ものや甘いもの(疳という字は やまいだれ+甘)、冷たいものを与えすぎることが問題です。鍼灸に合わせて生活のリズムや食事の制限が必要となります。
夜鳴きに対する鍼灸
一歳以下の幼児によく見られます。とくに生後すぐの幼児に多いようです。日中は正常ですが、夜になると鳴き出すか、または夜間の一定の時間になると鳴き出し、ひどい場合は一日中鳴き続けます。
原因は、脳や体の発達にあるようです。小さい時は、見るもの・聞くもの全てが新しい情報です。十分に脳や体が発達していないと、その情報が十分に処理されずストレスとなります。結果として、脳が休まろうとする夜に鳴くことでストレスを解消しようとするのです。鳴いているときは子供が心配になりますが、長引くと何より家族が疲労しイライラします。
簡単な対策として、幼児は色んな物に恐怖を感じるので、幼児が寝ている部屋を静かで気持ちのよい環境にし、強い光を直接あてないようにします。病気ではないのですから、叱ったり脅したりして、人為的に泣かせないようにします。また泣くことを無理にとめるような方法は極めて危険です。
テニス肘・野球肘の鍼灸
東洋医学において肘の痛みは、肘労と表現します。長期にわたって肘に負担がかかると肘部の筋肉ならびに肘をとおる経脈を労損し、肘痛が起こりやすくなります。又、捻挫や打撲の後に同様の症状が起こります。
サポーターなど痛みを軽減させるものを使用するものは極力短い時間に限定したほうが良いと思います。なぜなら痛みを軽減したまま、負担をかけると更に悪化させることがあるからです。
下痢に対する鍼灸
泥状あるいは水様便で排便回数が多い状態を指します。急におこるものと慢性的なものとがあります。それぞれの原因は以下の通りです。
急におこる下痢
(1)体が湿気を帯びていて、風に当たり冷える
(2)過度の飲食、油もの、冷たいものの食べすぎで起こる
慢性の下痢
(1)胃腸が普段から疲れていて、加えて精神不安が加わる。
(2)体の使いすぎ、疲労によるもの
(3)長い寝たきりによる
急に起こる下痢、慢性の下痢いずれにしても消化不良のものを排出する行為なので、決してとめることは控えたいものです。
慢性、急性胃炎に対する鍼灸(呑酸・嘔吐・胃痛)
胃腸に対して効果を期待できるものに
a.呑酸(口に酸っぱい液がこみあがる)
b.吐き気
c.胃の痛みがあげられます。
aとbは共通の原因によります。(1)精神的なイライラや感情の高ぶりが長時間続くと、胃の働きが悪くなり発生します。(2)食欲の不摂生により発生します。
cは以下が原因です。(1)冷たい物、生ものの過剰摂取(2)過食(3)強いストレス
鍼灸は胃の疾患に対して著明な効果を期待できます。
便秘に対する鍼灸
便が固い、排便時間が長い、または便意があるが排便が難しいなどの状態を指します。
便秘は他の病気に併発するものや単純に習慣性として現れるものもあります。
原因は以下のように考えられます。
(1)辛い物の食べすぎや胃が荒れて消化不良となり、結果として腸に負担がかかる
(2)長い時間座ったままの状態が続く
(3)精神的に不調をきたしておこる
(4)病後、産後に体力が回復せずにおこる
(5)体が冷えておこる
水分が足らないからといって水分をとっても、なかなか便秘そのものは改善されません。腸そのものの働きをよくしてあげる必要があります。
便秘は経験的に良い効果が期待できます。科学的にも鍼灸を行うと腸の蠕動運動がよくなるということが判明しています。